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白い灯台の肌
七ツ沖浜に、海上保安庁が四年ぶりに新しい灯台を設置するという記事が業界誌に載っていた。
タカムロ商事のなじみの元請け会社が受注したらしい。
灰色の息を吐きながら、陸地にそびえる白い建造物をみあげた。あの山頂のてっぺんに、タカムロ商事の管理する作業ヤードがある。
そこには、灯台を模した倉庫が建てられている。
「あの女を見つけなきゃ、らちがあかない」
女を想うと両肺に火がついたように、掻きむしられる。湿っていて品と光沢のある肌。嘘の無い両目をこっちに向けて、何かを求めていた。
こめかみから汗が落ちる。
俺は額に痛みと熱を感じ、袖で雫をぬぐいながら、渦巻き状の道を早足で登った。
二月なのに、南洋の孤島に注がれるような日差しは眩しくて、ついうっかり、すべてを許しそうになる。
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