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「本当に、お前たち兄弟はバラバラだな。本当に兄弟なのか」
「たぶん、ね」東丈は苦い顔で言った。
「たぶん・・って?何か、違うのか」
「俺を大嫌いだった、母親が、俺のことを”取替えっ子”だとよく言っていた。”俺のような、できそくないは・・東家の子供じゃない”とかね。”化け物”とも言ったよ。”あんたの生んだ子供になってことを言うんだ”と思ったものだが」
「なんか、それ、聞いたことがあるようなないような・・で、そんなおっかさんから、三千子姉さんがかばってくれて、頭が上がらないとか。確か、下手ないじめっ子どもより先に、おっかさんからいじめられたとか」
「ああ、そうだよ」初老の丈は憮然とした顔と蓮っ葉な言い方をした。
この年になっても、彼にとっては触れたくない、触れられたくない事件であることは間違いないようだ。
「なんだか、赤子のときには、あの001のように超能力を使ってたんだろ、おまえさん」
「・・・らしいが、正直、覚えてない」
「たしか、姉さんが、スパルタで、おまえさんを超能力を使わない”真人間”に躾けてくれたのじゃなかったか」
「らしいが・・・それも、俺は覚えていない。まあ、厳しく躾けられて、今でも、ピアノで”別れの曲”が弾ける。あ、弾いてやるから、おっさん、出て行かないか?」東丈は、明らかに”ナイス、アイデア!”という顔で言った。
「ドラキュラとかの十字架のつもりか?アホか、おまえさん、本当に超常現象研究家か」
「ふん、いいじゃないか、言ってみただけだよ」東丈の口調は、いつしか、少年じみたものになっていた。
なんだか、ドクとの何度ものやりとりのなかで、このスタンスが一番、しっくり来るのが、経験的にわかってきたということなのだろう。
「・・・その意味では、頑ななまでにおまえさんが超能力を使いたくないってのも、そのスパルタトラウマがあるのかもな」
「・・ふん、なんとでもいえ」丈は、蓮っ葉にいうしかなかった。
「普通、まあ、おっかさんを恨むのも事実だが、厳しくしつけた姉さんも、憎むものじゃないのかい」
「・・・だから?」
「おまえさんの”姉さん愛”も、実際はよほどか屈折しているのではないかと思って、な」
「おっさん」
「な、なんじゃよ、そのおっかない顔は」さすがに、ドクはその彼の顔に鼻白んだようだ。
「姉さんは、オレの、恩人なんだ。オレを”真人間”にしてくれた、な!」
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