第一章 満開のヒマワリ-真夏の思い出

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 ***  「まぁ、花が咲いたのね」  勇矢がヒマワリを数輪持って帰ると、母親の淑子(よしこ)が笑顔で受け取ってきた。  「お母さま、知ってたの?」  伯母に叱責(しっせき)された時、家では何も言われなかった。だから勇矢は、母親には知られていないと思っていた。  「ええ。連絡いただいたわ。きちんと注意したから、それ以上は言わないであげてねって(おっしゃ)ってたの」  「そうなんだ……」  義理の姉妹の間で、どんな会話を交わしたか少年には分からない。だが、家でも怒られなかったのは良かったとは思った。  「でも、綺麗に咲いてるわね。勇矢たちは初めて植えたんでしょう?すごいわね」  ()められると、小さな花畑に落胆した気持ちを忘れて勇矢は胸を張った。  「うん!直弥ときちんと世話したんだから!」  母親は笑顔で頷いて、昨年と同じようにリビングに飾ってくれた。父親も褒めてくれたが、姉は興味がないようで、花に視線を向けることもなかった。  そんな姉の態度を勇矢は気にもしなかった。両親に褒められたことが嬉しくて、貴和の反応はどうでもよかったからだ。  本家でも直弥はみんなに褒められたと聞いた。事情を聞いた祖父も、本家を訪ねてきて、二人の孫を褒めてくれた。  「よく頑張ったな。花が咲くまできちんと世話をしたのは偉いぞ」
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