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密葬を望んだ直弥の葬儀は、参列者の涙を誘った。式場はカスミ草に包まれていた。
穏やかな遺影も、棺の中で眠るような従兄も、カスミ草に囲まれていた。真っ白で可憐な花に包まれて直弥は旅立っていく。
勇矢は、自分の一部も死んだと分かった。二人は、魂を共有していたと感じた。
直弥が世を去った時に勇矢の一部も喪われたのだ。その喪失感を抱えながら、勇矢は生きていく。
直弥の願いを叶えるために……
最前列に、青ざめたかすみと泣き顔の紘基が座っている。葬儀になってから、かすみは決して涙を見せない。気丈にふるまう彼女が心配だった。
その不安は火葬場で的中した。
みんなで別れを告げた後、棺が閉じられて火葬のために奥へと消えていく……勇矢も数珠を握って冥福を強く祈った。次の瞬間、彼は悲鳴のようなかすみの声を聞いた。
「いや……!お願い、焼かないで!やめて!止めて……直弥さん、行かないで……!」
泣き叫ぶ彼女の腰を勇矢は抱えて止めた。
「かすみちゃん、頼む。直弥を送ってやってくれ」
「お願い。勇矢さん、離して……いやぁ!直弥さん!」
彼は係員に合図した。直弥を見送らないとならない。どんなに別れが辛くても……
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