第四章 届かぬ願い、拒めない約束-虹の向こうの国

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 ***  密葬を望んだ直弥の葬儀は、参列者の涙を誘った。式場はカスミ草に包まれていた。  穏やかな遺影も、棺の中で眠るような従兄(いとこ)も、カスミ草に囲まれていた。真っ白で可憐な花に包まれて直弥は旅立っていく。  勇矢は、自分の一部も死んだと分かった。二人は、魂を共有していたと感じた。  直弥が世を去った時に勇矢の一部も(うしな)われたのだ。その喪失感(そうしつかん)(かか)えながら、勇矢は生きていく。  直弥の願いを(かな)えるために……  最前列に、青ざめたかすみと泣き顔の紘基が座っている。葬儀になってから、かすみは決して涙を見せない。気丈にふるまう彼女が心配だった。  その不安は火葬場で的中した。  みんなで別れを告げた後、棺が閉じられて火葬のために奥へと消えていく……勇矢も数珠を握って冥福を強く祈った。次の瞬間、彼は悲鳴のようなかすみの声を聞いた。  「いや……!お願い、焼かないで!やめて!止めて……直弥さん、行かないで……!」  泣き叫ぶ彼女の腰を勇矢は(かか)えて止めた。  「かすみちゃん、頼む。直弥を送ってやってくれ」  「お願い。勇矢さん、離して……いやぁ!直弥さん!」  彼は係員に合図した。直弥を見送らないとならない。どんなに別れが(つら)くても……
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