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棺が扉の向こうに消えるとかすみは号泣した。何度も直弥の名前を呼びながら……彼女を抱きかかえるように控室に向かった。
だが、彼女はすぐに出ていった。今の彼女は眼を離せない。利光たちに合図してから、勇矢はかすみの後を追った。
彼女は外に出て煙突を見つめていた。勇矢も同じ方向を見た。
煙が昇っている。直弥の身体が魂を追って、虹の向こうの国へ向かっていると分かった。
涙で頬を光らせた勇矢は、かすみが戻るまで少し離れた場所で見守った。
そして、煙に向かって勇矢は呼びかけていた。
「さよなら、直弥。少しの別れだな。いつか会った時に思い出話をたくさんしてやるよ。待っててくれ……」
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