第四章 届かぬ願い、拒めない約束-虹の向こうの国

17/17
1598人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
 ***  骨を拾う時、かすみは小さな骨壺を持参していた。薄青い布で包まれた、掌に乗るほどの大きさの骨壺に、彼女は直弥の左手を(おさ)めていた。  その時、勇矢はようやく気づいた。  直弥の指輪……いつの間にか消えていた。  秋になる頃にはなかったと思い出した。直弥は、かすみに二人の記念の指輪を(のこ)したのだろう。  そして、かすみは、その指輪のための左手をもう一つの骨壺に納めた。彼女の強い愛情を感じた。  勇矢は、もう一度、直弥に語りかけた。  直弥……かすみちゃんはおまえを本当に愛してる。そんな彼女を見守ってくよ、ずっと……
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!