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溜息をつきながら、父親が勇矢に声を掛けた。
「気持ちは分かるが、姉に対しての言葉ではないぞ」
普段なら、バツが悪い表情で頷く勇矢だが、今回は拒否してきた。
「父さんの言うこと分かるけど、俺、我慢しない。もう限界だ。
あの言葉はない。直弥がいなくなって、どれだけ辛いか……分からない姉さんに謝る必要感じない。
俺、悪いって思ってないよ。
もし、謝れって言うなら、俺、もう家に来ない。息子はいないって思ってくれていいから」
強硬に謝罪を拒む勇矢に、両親は困惑しているようだ。彼らにしても、娘に対して甘いという自覚はあるようだった。
嫁いだ娘に対して甘くなるのは分かるので、今まではある程度無視していた。
だが、今の勇矢はかすみが一番大切だ。彼女への暴言を赦せるほど勇矢は穏やかな性格ではない。姉弟の衝突は回避できなかったのだろう。
「父さん、母さん。俺、しばらく帰らないよ。困らせたいわけじゃないから。
俺もしばらく離れて落ちつきたい」
息子は、娘よりも遥かに親に対する態度は柔らかい。好き勝手をしたという自覚が勇矢にあるからだ。しかも独身だ。余計に罪悪感があった。
両親は申し訳なさそうだ。どちらも二人には大事な子供。だから、余計に拗れた関係は辛いだろう。
だが、今回は、姉からの謝罪がない限り歩み寄る気はなかった。
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