第五章 すべてを包む愛-針葉樹の森のように

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 勇矢と貴和が激しくぶつかったのは本家も知ったようで、態度でなんとなく伝わってきた。  以前から不仲だというのは彼らも知っているので、(いさか)い自体は驚いていない。  だが、この時期ということには多少、何かを感じたようだが言葉にはされなかった。なので、勇矢も何も言わなかった。  姉弟間の問題ということで、出向取り消しも当然なかった。  かすみは申し訳なさそうだ。  (おぼろ)に、自分が理由だと察したようだ。何度か勇矢にこの件を話したそうにしているのが分かった。  だが、その度に勇矢から先に話しかけた。かすみが謝罪するのは間違っている。  自分の思いどおりにさせようと、怒鳴り散らす姉が悪いのだ。勇矢たち家族が面倒と放っていたのが、さらに事態を悪化させたのだ。  貴和は遼雅と同い年。今年、四十代になる。いつまでもわがままを許すわけにはいかない。  これは、家族の問題なのだ。かすみは大事だが、問題は、当事者で解決しないとならない。それが、最終的には決別になったとしてもだ。
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