第五章 すべてを包む愛-針葉樹の森のように

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 ***  キリヤマ・ケア・サービスの業務が軌道に乗った頃、直弥の一周忌が来た。  欠席すると思われた貴和が訪れたので、本家は驚いたようだ。  従兄(いとこ)二人は、本家に残って夕食を一緒にした勇矢を外に誘った。事情を聞きたいのだろう。  「来るとはね……英志叔父さんは言ってたけど、欠席と思ってたよ」  遼雅はウィスキーを飲みながら苦笑した。従妹(いとこ)のことをまったく評価していないようだ。姉弟と同じく、この従兄妹(いとこ)も不仲だ。横で飲む翔真も同じ意見のようで呆れた笑顔だ。  自宅でないのは、早恵が二人目を妊娠中なので、飲みづらいという事情もあるようだ。  「義兄(にい)さんへの援助の打ち切りを言ってるからね。それ言われたら出るでしょ」  勇矢の口調から敬語はすっかり取れていた。本家との距離感が分かる。  「なるほどね……贅沢と引き換えなら出てくるな。法事は二、三時間だもんな」  翔真が呆れた表情のまま頷いた。  「そうでしょ。実際、法事終わったらすぐ帰ったんだから。  でも、親に強く言われたのは初めてだから、それにはショックを受けたらしいよ」  貴和に両親が甘いのは、二人も知るので苦笑しか出ないようだ。  「これから少し静かになるかな…」  「どうかな。俺を無視してるんだから反省してないだろうし」  その言葉にも賛成のようで、従兄たちは笑った。
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