第五章 すべてを包む愛-針葉樹の森のように

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 ***  直弥が世を去って六年。冬に近い命日に七回忌が行われた。  もし、彼が生きていたら四十歳。だが、その日は永遠に来ない。勇矢は、自分だけが年齢を重ねる寂しさを感じていた。  遺影の従兄(いとこ)は六年前からまったく変わらない。  穏やかな笑みを浮かべた優しそうな表情。かすみがカメラを向けた時の笑顔だと聞いている。愛する妻を見る時の幸せそうな笑顔だ。  何年()っても勇矢は心の痛みを感じていた。従弟(いとこ)の彼でも(つら)いのだから、かすみの心の傷が()えているとは思えない。  だが、あれから六年。七回忌を節目にと勇矢は考えていた。年齢も節目だ。  もし、拒絶されたら……それでも構わないと、勇矢は直弥との約束を果たそうと思った。  勇矢はかすみを自宅マンションに招いた。
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