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彼女の顔を上げさせて軽く唇を合わせると、かすみは大きく目を見開いて、勇矢の名前を茫然と呼んだ。
「勇矢さん……」
彼女を包んだまま、勇矢は秘めていた想いを伝えていた。
「俺、ずっと君を愛してたんだ。直弥が生きてる時から。
直弥がいる時は、三人といられるだけで満足だったんだ。でも、今は違う。君と紘基をずっと守っていきたい。
一緒に人生を送りたい……」
ここまで言うと、かすみは勇矢の腕から逃れた。拒絶されたと、勇矢が諦めの思いを感じた時、かすみはブラウスのボタンを外していた。
「かすみちゃん……」
硬直する勇矢の目の前で、彼女はブラウスを脱いで、ブラジャーも外した。思わず視線を外す勇矢に、初めて聞く彼女の鋭い声が届いた。
「見てください」
凛とした声に逆らえないものを感じて、勇矢は彼女に視線を戻した。初めて見る彼女の肌に息を飲む。かすみは右の胸を勇矢に見せてきた。
「……っ」
思わず喉が鳴った。かすみの右の乳房の脇側に赤い痣があった。どう見ても歯型だ。誰のものか確認の必要はない。
「分かりますよね。直弥さんの噛んだ跡です。彼は、噛んだ時に謝ったんですけど、私は残ってほしいって言いました。そして、私の願いのとおりに、直弥さんの噛んだ跡はこうやって残ってます。
勇矢さん。
これを見て怯みましたか。それなら、さっきの言葉は聞かなかったことにします。今までどおり親戚としてのお付き合いを……」
かすみの声が途切れた。勇矢は、彼女の左の胸に優しく触れたからだ。
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