第五章 すべてを包む愛-針葉樹の森のように

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 かすみは返事の代わりに彼へと寄り添った。問い返さないで、勇矢はもう一度、かすみを抱き寄せた。  「愛してる、かすみ。  君を一生大切にすると約束するよ。紘基も自分の息子として、これからも大事にする。だから、俺の横で生きてほしい」  黙って頷いたかすみは、その後、言葉にしてくれた。  「はい……勇矢さんと一緒に生きていきます。だから約束してください。二人が、おじいさん、おばあさんになってもずっと一緒だって」  きっとかすみは、直弥とそうなることを願ったのだろう。(かな)わないかもしれない願いだが、勇矢は叶えたかった。その願いを。  「ああ、約束するよ。絶対、かすみよりも長生きする。もう一人にはしないから」  勇矢はかすみを抱き締めて静かにキスをした。今度は彼女も(まぶた)を閉じて、彼からのキスを受け入れた。  窓からは太陽の光りが斜めに差し込んで、二人を輝かせた……
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