第二章 従兄の怒り-竜巻が起こり、消えた後に差し込む光り

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 霧山(きりやま)勇矢(ゆうや)は、グループの中では、一番新規に創設された会社に勤めている。  父親は先代総帥(そうすい)の次男。父親からは兄に当たる長男-勇矢の伯父-には息子が三人いる。勇矢が後継になる可能性はほぼゼロだ。  大賛成だった。  巨大企業グループのトップなど彼にはまっぴらだった。適当な時期に、現在勤めている会社の社長になる。それで充分以上だと思っている。  霧山一族の中でも中心に近い分家なので、彼は金銭に不自由を感じたことはない。そして、女性にはもっと不自由を感じなかった。  結婚は業務の延長だと彼は思っていた。  妻になるだろう女性は、霧山グループの幹部か取引会社の社長令嬢。霧山一族の繁栄のための結婚だから、問題ないと思っている。  彼の姉は、グループの中核企業、霧山商事の幹部の息子と結婚した。  そのためか、彼女は、自分の子供を総帥の後継者にしたいという野心を抱いている。弟である勇矢には、あほらしいと思う願望だ。  関連企業含めて七十万人にも及ぶ企業帝国のトップになど、誰が好きこのんでなりたいのか……姉の気持ちがまったく理解できない弟だ。  姉は勇矢の五歳上。伯父の長男と同い年だ。なので、余計に対抗心を持っているのかもしれない。  しかし身内のひいき目を除いても、従兄(いとこ)遼雅(りょうが)は有能な男性で、いずれ結婚して後継者を持つだろう。  妄想するのは自由だと、勇矢は姉のことなど無視していた。彼は、自由気ままに今を楽しんでいる。それが一番大切だった。
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