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「直弥の形見を俺たちの家に植えたい。紘基にずっと見せたい。
それに、俺が見たいんだ。直弥の二つの花を」
「ええ。ぜひ、お持ちになって。直弥も喜ぶわ。三人と一緒だって」
尚子が微かに涙ぐみながら笑みを向けてきた。早逝した息子は、愛する者たちとこれからも一緒だと分かったからだろう。
会話が途切れると、紘基が期待の表情で勇矢を見てきた。
「ねぇ、ゆうおじさんが僕の新しいお父さんになるの?」
自分にそっくりな少年に、勇矢は笑みを返しながら肯定した。
「ああ、お母さんと紘基と家族になりたいと思ってる。
でも、お父さんって呼ばなくても大丈夫だぞ」
「それなら、勇矢さんをどうやって呼べばいいのかしら」
悩んでいるかすみに勇矢は穏やかに言った。
「大丈夫。ゆっくり考えていいから。まだ時間はあるから」
慌てないで関係を構築したい。そんな考えを分かってくれたようで、かすみが苦笑しながら頷いた。
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