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両親の反応は多少心配だったが、二人は反対しなかった。
「いいんじゃないか。派手にする時代でもないだろう」
「父さん、母さん、ありがとう」
二人は、かすみと紘基のことも考えて賛成してくれたのだろう。素直に感謝の言葉が出た。
実家を出た勇矢は、かすみをマンションに誘った。何かをするわけではないが、少しでも二人でいたかった。
部屋に入ると、冬の早い夕暮れが眺められた。今日は晴れたが、やはり初冬の空気なので寒く感じられる。毎年、冬の始まりは苦手だ。
前の週と同じく、ホットレモネードを作った。彼女も寒かったようで、安心したような雰囲気で少しずつ飲んでいる。
身体も温まって落ちついた頃、かすみが声を掛けてきた。
「あの……知りたいことがあるんですけど……」
ためらう様子が不思議だった。もう、勇矢に秘密はないが、疑問があるなら答える程度は難しくない。
「何?答えられることならいいよ」
彼女は頷いた。
「直弥さんとの件です」
従兄の名前に勇矢は驚いた。彼女は、直弥と勇矢に、何か疑問に思うことがある。だが、心当たりがなかった。
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