番外編 第一章 親子の時間-記憶にある香り

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番外編 第一章 親子の時間-記憶にある香り

 かすみの妊娠が判明してからの勇矢(ゆうや)は、過保護な夫そのものだった。  妻が勤めるキリヤマ・ケア・サービスへの送迎は当然で、買い物も一人ではさせないほど。  そして、できるだけ早期の休職まで求めたのだ。  紘基(ひろき)を妊娠した時、直弥(なおや)利光(としみつ)たちは、かすみに早期の休職か退職を求めたが、彼女は仕事が楽しいと、かなりの月数になるまで会社勤めを続けていた。  だが、今回は四十歳になろうかという年齢での妊娠。  二人目だからというかすみを()き伏せて、勇矢は紘基の時よりもかなり早い休職を認めさせた。早期の復職と引き換えだったが……  それでも勇矢は安心していた。この妊娠は、直弥が(さず)けてくれたようにしか思えなかった。  紘基がかすみの願いを受けて生まれた奇跡の子供なら、今回は、直弥が望んでくれたのではないかと感じていた。  絶対に無事に出産させると、勇矢が過保護の思いを強くするのは当然だった。
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