番外編 第二章 家族の時間-雪解けを告げる花

2/25
1598人が本棚に入れています
本棚に追加
/202ページ
 「そういえば映像で見たような気もする。  かすみは賛成してくれる?」  確認すると、彼女は笑みを浮かべたまま頷いた。  「ええ、決定ですね」  言いながらかすみはおなかに触れた。  「聞こえるかしら。あなたの名前はさくらよ。パパが決めてくれたの。可愛いわね」  勇矢も静かにかすみのおなかを()でた。  「さくら、みんな待ってるからな。元気で生まれてきてくれよ」  元気に生まれてほしい。それ以上の望みはない。二人はおなかの上で手を重ねた。  名前が決まったので、余計に周りは喜んだ。  女の子で名前はさくら。分かりやすくて可愛い。聞いた誰もが()めた。  かすみは桜の花が咲いた絵を描いた。青空を背景に、薄いピンクの花が枝いっぱいに広がる淡い色彩の絵だ。  勇矢は喜んで、さっそく彼の肖像画と並べて寝室に飾った。書斎にある、三人の団らんの絵の横にはきっと、四人になった家族の絵が飾られるだろう。
/202ページ

最初のコメントを投稿しよう!