1607人が本棚に入れています
本棚に追加
陣痛の短い合間に、勇矢はかすみに声を掛けた。もうじき生まれるのだろう。分娩室に入った時よりも陣痛の間隔が短くなり、痛みも強くなっているのが分かる。
だが、かすみは勇矢を見て首を振った。
「大丈夫です。勇矢さんの子供だから……」
それでも、勇矢は申し訳なく感じるしかできない。自分の無力を痛感した。だから、神に祈った。
(どうか、無事に生まれますように。かすみも大丈夫でありますように)
そして、直弥にも祈っていた。
(直弥、守ってくれ)
「霧山さん、頭が見えてきましたよ」
声に、勇矢は我に返った。かすみが激しい痛みに耐えながら、最後の力を振り絞っているのが分かる。もう少しで二人の子供が生まれる。
直弥が、勇矢に授けてくれた幸せの一つの形が……
最初のコメントを投稿しよう!