番外編 第二章 家族の時間-雪解けを告げる花

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 かすみが大きく息をつくと、小さな声が聞こえてきた。産声だと分かるのに時間が掛かった。  「生まれた……」  小さな声は、茫然(ぼうぜん)と自分の耳に響いてきた。  出産を終えて、子供がかすみの横に置かれると、勇矢の瞳が(うる)んだ。かすみに似ていた。勇矢がそうなってほしいと願ったように。  「かすみに似てる……そうだったらって思ってたから嬉しい……」  感動に揺れる勇矢の声に、かすみが夫を見てきた。  「でも、勇矢さんにも似てます。可愛い……」  さくらは両親に似ていた。かすみの面影が強いが、勇矢の面差しもある。紘基が直弥にそっくりなのに比べると、二人に似ていて勇矢は少し驚いた。  「かすみ……ありがとう」  勇矢の声が震えた。
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