番外編 第二章 家族の時間-雪解けを告げる花

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 将貴の横に立っていた慎一は、優しげな口調でかすみに祝福を伝えてきた。  「かすみさん、おめでとう。かわいい赤ちゃんだね」  「ありがとうございます、慎一さん。無事に生まれてホッとしました」  かすみは、勇矢の姉夫妻を名前で呼んだ。今までの距離感が分かる。このままなのか変わるかは、この男性の決断次第になる。  もしかしたら、勇矢の義兄でもなくなる可能性があるからだ。  彼の複雑な思いを知らない慎一は、勇矢にも笑顔を向けてきた。  「勇矢くんもおめでとう。親バカになりそうな気がするね」  否定したいが、ないとは言えない。勇矢は(かす)かに赤くなった。  慎一は、アレンジ花と鉢植えを持ってきていた。  ピンクの花の周りがカスミ草で飾られた花かごは、さくらの名前に似合っている。  だが、花の鉢植え……特に問題があるわけではないが珍しい祝いの品に、勇矢とかすみは不思議な表情になった。慎一が笑っている。  「これはプリムラという花で、日本ではサクラ草と呼ばれてるんだよ」  袋から出された鉢植えには、ピンクの花びらを持った桜のような花が咲いていて、サクラ草と呼ばれるのが分かる。
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