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かすみが感動の表情だ。
「ありがとうございます。なんて可愛い花」
鉢をベッド脇のテーブルに置くと、かすみは娘に話しかけた。
「さくら。貴女と同じ名前の花よ。すごく可愛いわ」
「義兄さん、ありがとう。嬉しいよ。さくらもきっと気に入るよ」
二人の感動した様子に、慎一は静かに微笑んだ。
「喜んでもらえて嬉しいよ。
でも、これは私が選んだんじゃない。貴和が頼んできたんだ」
「え……姉さんが」
勇矢だけでなく、今までの貴和を知っている誰もが驚いた。
「かすみさんから子供の名前を聞いたから、相応しいプレゼントにしたいと、ずいぶん調べたようだ。
桜の名前の植物があると知って、私に連絡してきたんだ。桜色で桜の花びらに近い品種が欲しいけど、どうやって探していいか分からないとね。だから、こちらで探すと答えたんだ。
考えたとおりの品物が見つかった時はホッとしたよ」
沈黙が流れた。そんな落ちつかない空気を破ったのは、意外なほど穏やかな勇矢の声だった。
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