番外編 第二章 家族の時間-雪解けを告げる花

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 かすみが感動の表情だ。  「ありがとうございます。なんて可愛い花」  鉢をベッド脇のテーブルに置くと、かすみは娘に話しかけた。  「さくら。貴女と同じ名前の花よ。すごく可愛いわ」  「義兄(にい)さん、ありがとう。嬉しいよ。さくらもきっと気に入るよ」  二人の感動した様子に、慎一は静かに微笑んだ。  「喜んでもらえて嬉しいよ。  でも、これは私が選んだんじゃない。貴和が頼んできたんだ」  「え……姉さんが」  勇矢だけでなく、今までの貴和を知っている誰もが驚いた。  「かすみさんから子供の名前を聞いたから、相応(ふさわ)しいプレゼントにしたいと、ずいぶん調べたようだ。  桜の名前の植物があると知って、私に連絡してきたんだ。桜色で桜の花びらに近い品種が欲しいけど、どうやって探していいか分からないとね。だから、こちらで探すと答えたんだ。  考えたとおりの品物が見つかった時はホッとしたよ」  沈黙が流れた。そんな落ちつかない空気を破ったのは、意外なほど穏やかな勇矢の声だった。
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