第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 かすみのおなかの子供は男だと分かった。  遼雅(りょうが)が未婚なので、彼の次の代の最有力になるわけだ。だが、後継者として認知されている遼雅が、何も考えていないとは思えない。  弟夫妻を不安にさせないためにも、彼は近いうちに決断するだろうと勇矢(ゆうや)は思っている。  なので、直弥(なおや)の子供が後継者として見なされるのは短い期間のはずだ。  しかし、性別が分かった。安定期には既に入っている。利光(としみつ)は、直弥とかすみの結婚と妊娠を、一族とグループ企業に公表した。  当然だが大騒ぎになった。  利光の子供は男が三人。三人の誰と結婚しても、夫は霧山(きりやま)中枢(ちゅうすう)に入る。娘のいる家が狙うのは勇矢にも分かる。  実際、分家の勇矢の元にも、呆れるほどの数の釣り書きが来る。従兄(いとこ)たち相手なら、釣り書きでひと部屋埋まっても驚かない。  それほどの家柄でありながら三男は、闘病中とはいっても一般家庭の娘と結婚した。騒動になるのは避けられない。
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