第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 ***  「お母さま、聞いてたんでしょ、直弥の結婚。  あんな普通の女の子供が後継者ですって!  冗談でないわ。将貴(まさき)を差し置いてそんなの認められないわ。霧山の血筋なら、私の子が年上よ」  ヒステリックな声に、勇矢は心からうんざりした。土曜日だからと自宅で休んでいたことを後悔した。  母親が報告しないのは正しかったと思える。  婚家に住む娘にわざわざ連絡することを避けたのだろう。伯父たちと親しい淑子(よしこ)は、自分の娘に教える問題をきちんと把握していたようだ。  なので、母親の援護をした。  「姉さん。  遼雅(にい)が結婚しないって誰が決めた?彼に子供が出来たら、その子が後継者になるんだぞ」  勇矢の言葉に、姉は呆れた視線を向けてきた。  「そうかしら。遼雅って昔から冷めてるし仕事しかしてないわ。それに翔真(しょうま)は貴方と同じで遊んでばかり。  霧山本家の子供は、私の子と、その女を選んだ直弥の子供だけなのよ。まったく何を好きこのんで、そんな女を選んだのかしら。  また、霧山の血を汚す……」  姉の言葉を最後まで聞きたくない勇矢は立ちあがった。怒りの表情を浮かべながら近づく弟に気づいた貴和(きわ)(おび)えた表情になった。
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