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結婚妊娠を公表してそれほど経たない頃に、かすみは産休に入った。
すぐの休みに勇矢が訪問すると、直弥は安心した雰囲気だったが、かすみは少し沈んで感じられた。
花とスイーツを受け取った時は嬉しそうな表情になったが、やはり普段よりも沈んで見える。勇矢は窺うように声を掛けた。
「こんにちは、かすみちゃん。体調大丈夫?元気ないようだけど」
心当たりはあるが確認はできなかった。かすみは無理に浮かべただろう笑みを向けてきながら首を振った。
「体調は大丈夫です。子供も問題ないですし。
このお花、綺麗ですね。スイーツも美味しそう。
ただ……やっぱり会社、辞めないと駄目なんだろうなって……」
彼は退職に賛成だが、本人にはとても言えない。あいまいに頷いた。
「それは……子育てって大変なんでしょ?シッター任せにしないんだから余計にさ。仕事との両立難しくない?」
世の中の母親が、子供を預けて働く程度は勇矢も知っている。だが、霧山家の女性が子供を預けて働く……ありえない。
働くなら、複数のベビーシッターが必要になるはずだ。
元々、霧山家の子供は、ベビーシッターとナニーが育児の中心だ。両親も、もちろん子供を放っているわけではないが、とにかく一族の人間は忙しい。すべての時間を育児に費やすことは不可能だ。
なので、勇矢の育児に対する知識は友人夫婦から得ている。かすみも同じようで、彼の言葉に反対しなかった。
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