第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 「そうなんですよね。でも……あの会社、本命だったんです。営業部だったから、直接取引に関わってるみたいに思えて余計に楽しかったんですよね……  でも、子供や直弥さんのことを考えると……」  直弥の病状は落ちついてる。だが、がんが消えたわけではない。今以上に状態が良くなっても手術は必要だろう。  そうなった時、ずっと傍にいたいはずだから、勤務を続けるとなるとそれが難しくなる程度は理解しているはずだ。  「分かるよ。かすみちゃんは仕事が好きだって。でも、一番って変わるよね。  俺も、直弥や子供を優先してほしいな。かすみちゃんが残念なの分かるけど、しばらくは家にいてほしいから。  子供が大きくなって、直弥が良くなってから働くんでもいいよね。グループの仕事も結構面白いよ。  まぁ、俺は最近まで、飽きたな~なんて思ってたから、全然、参考にならないけどね」  勇矢の軽い口調に、かすみは困ったようだったが、直弥は笑いだした。  「すごい変化だよね。グループ中に広がってるんだってね。  でも、どうしたの?何がきっかけなんだろうって思ってるんだよ」  一瞬、反応に困った。遼雅には、直弥の病気がきっかけと話した。だが、本人には言えない。事実はもっと明かせない。  勇矢は、参加することになった、会社の新プロジェクトを理由にした。
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