第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 「いや……新プロジェクトに参加しただろ。聞いた時から興味あってさ。メンバーになりたかったから真面目になったんだ。  期待どおり面白い。今年三十一だぞ。そろそろ本気で仕事だ。遊びは卒業だよ」  答えを聞いた直弥は納得したような笑顔だ。  「結構、すごいメンバーだって聞いてるよ。やっぱり面白いんだ。ちょっと気になるね。  それと、遊びをやめるのはいいんじゃない。将来、勇矢の家族と行き来したいって思ってたんだ」  前半の言葉は笑顔で頷けるが、後半は……直弥は何も知らないのだから、そう望んでも仕方ない。気づかれないように笑顔を返した。  「それは、これが終わってから考える。とにかく今は仕事優先だな」  新プロジェクトは、霧山グループのネットワーク更新だ。社内の選抜メンバーが専任で作業をしている。  一年から二年程度。グループ全体に関わるので、サポート体制も万全だ。最初は、かすみに良く思われたいという気持ちがあったが、今は無関係に面白くなっている。  勇矢の言葉に直弥が笑いだした。かすみが不思議そうだ。勇矢も苦笑するしかない。仕事優先は従兄(いとこ)の口癖だった。  「僕の口癖を言われるとね……かすみと会って、そんな気持ち全然なくなったけど」  言われたかすみは嬉しそうに直弥を見て、勇矢は気づかれないように二人から視線を外した。
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