第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 ***  次の訪問時に勇矢は、直弥の治療が順調で、手術も可能なところまできたと、本人から聞いた。  「マジか?やったな」  勇矢は思わず声が大きくなって二人に苦笑された。奇跡だと思った。余命半年の従兄(いとこ)が今も元気で、完治の可能性が見えてきた。  「いつ、手術なんだ」  待ちきれないような口調に、直弥が苦笑しながらも嬉しそうに返してきた。  「子供が生まれてからの予定。かすみが落ちついてからの手術がいいだろうってね。治療続けて、もう少し小さくしてからだと手術も短いんだって」  「なるほど。確かにそうだな」  夫の手術となると、出産前のかすみには大きなストレスになる。生まれてからがいいのは分かる。それに、抗がん剤を続ければさらに縮小するのは間違いない。副作用を無視すれば、継続してからの手術がいいのも分かった。  明るい雰囲気の訪問が終わり、勇矢はマンションを出た。エントランスの先の道路には一台のタクシーが()まっている。貸切と出ていて、勇矢の移動のための車だ。  「おかえりなさいませ。どちらに向かえばよろしいでしょうか」  「リラッサンテに向かってくれ」  ドライバーは勇矢の指示に頷くと、滑るように発進した。勇矢は趣味で運転をするが、最近はタクシーで移動している。実家に車を置いたままだからだ。  彼は、現在、実家を出てホテル住まい。  霧山グループの中で、ホテル、レストランなどの統括運営会社である、キリヤマ・ラフィナートの最高級ホテル、リラッサンテ・キリヤマに滞在中だ。
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