第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 姉に言い放った後、勇矢は母親から困った表情で頼まれている。  少しの間、貴和が来る時は出かけてほしいと。淑子(よしこ)も娘が悪いとは分かっているが、さすがに、姉をあんた呼ばわりしたことは軽く叱責(しっせき)された。  目上の存在に対して、礼儀がなっていないと。  そして、姉は、勇矢が実家にいる間は、将貴を訪問させないと母親に言ったようだった。彼が未婚なので、孫は貴和の息子の将貴だけ。会いたいのは分かる勇矢は苦笑した。  姉に謝罪するよりも遥かに簡単だ。  「いいよ。だったら、しばらくここ出て違うところに住むよ。  そろそろ一人で暮らさないとって思ってたからね。  霧山だからって、いつまでも親に頼ってばかりだったらね」  貴和に対する嫌味があからさまな言葉に、母親は表情をしかめた。  嫁いでいながら、貴和は両親から援助を受けている。夫の給料ではまったく足りないと……彼は、霧山不動産の部長。確かに、グループ内では強い立場の会社の人間ではない。  だが、夫の実家はそれなりの家柄。贅沢は可能だ。何を買えば、そんなに足りないのかと、勇矢は本気で不思議だ。  淑子も、娘を甘やかしているという自覚があるのだろう。何も返さなかったが、この家を出るという部分には複雑そうだ。  自由に遊んでいた時でも両親は見ないふりをしてくれた。少し申し訳ないとは思う。だが、いつまでも親元では恥ずかしい。  直弥もかすみも独り暮らしを経験している。
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