第一章 満開のヒマワリ-真夏の思い出

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 「ごめんなさい」  勇矢は素直に謝った。  自分の家はあまり居心地が良くないので、少年は伯父家族の住む、この屋敷に来ることが多い。勇矢の姉の貴和(きわ)が、弟を邪魔にするからだ。  姉は、ピアノや生け花という、勇矢には全然興味のないことをしているから、少年も近くには行きたくない。  直弥の上の兄の遼雅(りょうが)は、やっぱり習い事をしていて、それほど遊んでくれるわけではないが、姉とは比べられないほど優しい。下の兄の翔真(しょうま)は遼雅よりは一緒にいてくれる。  そして、同い年の直弥はいつ行っても仲良く遊んでくれる。だから、勇矢はできるだけこの家に来ていた。  そんな彼にとって、もう来るなと言われることが一番怖い。謝って(ゆる)してもらわないと駄目だと、勇矢は伯母に謝っていた。  従弟(いとこ)の謝罪を聞いた直弥が、涙目で続けて謝ってきた。  「隠れて作ってごめんなさい」  息子と甥の謝罪に、尚子(しょうこ)は困ったように二人を見ている。  「植えてしまったものを引き抜くのは可哀想ですから、駄目とは言わないわ。  でも、隠れて好き勝手なことをしたんですから、ごめんなさいで終わりにはできないわね」  「え……でも……」  謝る以外に何をすればいいのか、幼い二人に分かるわけはない。
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