第一章 満開のヒマワリ-真夏の思い出

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 「佐藤(さとう)と一緒に庭の世話をしなさい。自分たちが植えた分だけ水やりをしても、今回は足りないです。  佐藤は、自分のミスで知らない植物がたくさん()えてきたと報告してきました。他の人に迷惑を掛けたのですから、その分の手伝いも当然です」  本家は広く、庭も勇矢の家よりもずっと大きい。嫌だと少年たちが思うのは、尚子(しょうこ)も分かっているようだった。  でも、直弥と、彼の従弟(いとこ)が相手だから、庭師の佐藤もそれほど手伝えと言わないのではという考えが、勇矢に浮かんだ。  それに、育ってきたヒマワリはそのままでいいと言われている。頑張れば、昨年見たようなヒマワリ畑になる。その光景を思い浮かべながら勇矢は頷いた。  「手伝います。だから(ゆる)してください」  尚子は、勇矢の言葉を聞いて苦笑している。  「勇矢くんと直弥がきちんと言ったことを守れるなら赦してあげます」  直弥が母親の言葉を聞いて、(あわ)てたように頷いた。  「僕もきちんと手伝うから、もう赦してくれる?」  末息子の素直な言葉に、いつまでも怒っていられなかったようで、尚子は苦笑したまま了承してきた。  「約束を守りなさい。守るなら、これ以上言いませんから」  「はい!」  双子のように似た二人は揃って答えて、尚子を微笑ませた。
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