第三章 秘めた想い-深緑の木漏れ日

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 別れ話は初めてではない。割り切った関係と了承しているのに、終わりを告げるとすがってくる女は多かった。残酷な言葉と態度で捨てたことも一度二度ではない。  だが今回は違う。勇矢にしても真剣に結婚を考えていた。  彼女となら、敬意を持った結婚生活になるはずだから、愛情がなくても問題ないだろうと思ったのだ。  愚かな考えだと今なら分かる。  (見合いは終わりだな)  交際の終了を聞くと、両親は残念がった。しかし、無理に結婚して失敗するくらいなら、慎重でいいとも思ったようだ。  (あわ)てる必要はないと、両親は勇矢を励ました。  彼は今年、三十一歳。急いで結婚しなくても大丈夫な年齢だ。一度の失敗で(あきら)めてほしくないのだろう。  確かに、年上の遼雅や翔真は現在も未婚。まだまだ諦める年齢ではない。  だが、見合いはしばらく断ると両親は言ってくれた。残念だろうが、励ましてくれる親に感謝して、勇矢は再び身軽な状態となった。
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