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「直弥……」
名前しか呼べなかった。何か言ったら涙が溢れそうだった。直弥は静かに頷いた。
「来てくれて、ありがとう。
ごめん」
どうして従兄が謝るのか、分からなかった勇矢は涙目で返した。
「何がごめんなんだ。おまえ、何も悪いことしてないのに、どうして……」
言いながら涙が頬を流れた。信じたくなかった。
「勇矢に言われてたのに……僕、痛みを我慢したんだ。再発と言われるのが怖いから……」
従兄の恐怖を思うと責める気持ちはまったくなかった。
痛みが出たなら再発の可能性は大きい。その事実を認めるのが怖いと、隠したくなるのは誰でも分かる。勇矢は首を振った。
「俺、直弥を責めない。また治療受ければ良くなるんじゃないか?
かすみちゃんや紘基のために頑張ってくれよ」
懇願の響きもある言葉に、直弥は静かだが力強く頷いた。
「うん、頑張る。負けてられないよね。二人のためにも」
(そうだ。そう思って頑張ってくれよ。今回も)
勇矢は心の中で呼びかけた。
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