第四章 届かぬ願い、拒めない約束-虹の向こうの国

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 「直弥……」  名前しか呼べなかった。何か言ったら涙が(あふ)れそうだった。直弥は静かに頷いた。  「来てくれて、ありがとう。  ごめん」  どうして従兄(いとこ)が謝るのか、分からなかった勇矢は涙目で返した。  「何がごめんなんだ。おまえ、何も悪いことしてないのに、どうして……」  言いながら涙が頬を流れた。信じたくなかった。  「勇矢に言われてたのに……僕、痛みを我慢したんだ。再発と言われるのが怖いから……」  従兄の恐怖を思うと責める気持ちはまったくなかった。  痛みが出たなら再発の可能性は大きい。その事実を認めるのが怖いと、隠したくなるのは誰でも分かる。勇矢は首を振った。  「俺、直弥を責めない。また治療受ければ良くなるんじゃないか?  かすみちゃんや紘基のために頑張ってくれよ」  懇願(こんがん)の響きもある言葉に、直弥は静かだが力強く頷いた。  「うん、頑張る。負けてられないよね。二人のためにも」  (そうだ。そう思って頑張ってくれよ。今回も)  勇矢は心の中で呼びかけた。
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