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神はどうやって願いを叶えているのだろう。勇矢は真剣に思った。
直弥は即座に治療に入った。できるだけ見舞いに行くようにした勇矢は、従兄が弱っていくところを見ることになった。心が激しく痛んだ。
マンションに帰ると涙が溢れる。泣いて、次の見舞いに備える日々が過ぎた。
そんな中、勇矢に商事への転籍の話が出た。
土曜日に本家へ呼ばれた。かすみたちは不在だった。直弥の見舞いに行っているのだろう。
「おはよう。急に呼びだして悪かったね」
遼雅の言葉に首を振った。休みの日は予定を作っていない。直弥に会いに行く以外の用事はできるだけ避けている。
「大丈夫です。用事は最低限にしてますから。直弥に会いに行く以外は何もしてませんよ」
その言葉に尚子が涙ぐんだ。末息子の容態を思うと、こらえきれないのだろう。
「そうか……
で、来てもらったのは、商事に転籍してほしいってことなんだ」
「商事に?」
勇矢はシステムエンジニアで、霧山商事の業務に関してはまったく無縁だ。
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