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番外編 第二章 家族の時間-雪解けを告げる花
桜の蕾が膨らみ始めた頃、かすみのおなかの子供が女の子だと分かった。
勇矢だけでなく、兄になる紘基、勇矢とかすみの実家に、本家のみんなも喜んだ。
性別が分かったので、勇矢はかすみに名前を提案した。
「かすみは考えてる?俺は一つあるんだ」
「まだ、これっていうのは……勇矢さんの考えた名前って?」
訊いてきた妻に、勇矢は考えていた名前を告げた。
「ひらがなで、さくらにしたいなって」
「さくら……」
何度かつぶやくかすみに勇矢は微笑んだ。
「五月が予定だから遅いんだけどな。でも、花に関する名前がいいって。そう思ったら桜がいいかなってさ」
かすみと直弥が運命の再会をした公園には、桜がたくさん植えられている。かすみが好きだと言った桜の花を、勇矢も何度も見た。その記憶があった。
夫が自分の名前にちなんでくれたと知って、かすみは笑みを向けてきた。
「嬉しいです……可愛い名前ですね。
それに、季節は大丈夫です。桜は北海道では五月に咲くそうですから」
勇矢は何度も北海道に行っている。しかし五月ではないので、北の大地に満開の桜が咲くところを見たことはない。
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