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夜空を見上げたら
愛知県名古屋市の外れにある、小さな町。
そこで、ある二人の少女たちが、公園のベンチで空を見上げていた。
「ねえ、リティー。今日みたいな夜は、すごく最高じゃない?」
「そうね、有香。ふふっ、もしかしたら空も飛べちゃいそう」
実は、二人は親友を超えるくらいの大親友。誰もが羨ましがるような、とても仲の良い二人なのだ。
ちなみに、リティーはアメリカ人である。
声を弾ませながら、二人が見ているのは、満開に咲き誇ったような星空。
スパンコールや金箔を散りばめたように、空の全てに星が浮かんでいる。
外れとは言っても大都市なので、世にも珍しい夜の空である。
「そらぁ?そんな、ホントに飛べるわけ…」
「ほら、有香はちょっと真面目なのよ。ねえっ見て!あの星、他よりも輝いてない?」
そう言ってリティーが指さしたのは、北に淡く光る金色の星だった。
確かに、この空をぐるりと見渡しても、一番目立つだろう。
時々光が弱くなったり、かと思えば強くなったり、少々不安定な星ではあるが。
「ああっ!もしかしたら誰か住んでいるの「かも!」
「……エイリアンとか?」
「そう、それ!」
「いたらいいねぇ~」
「絶対いるって!」
有香が話すほど、リティーは本当に行けるとでも思っているのか、大袈裟に胸に両手をギュッと押し付けている。
有香は慎重、リティーは天然。
この二人のコンビがかみ合ったりかみ合わなかったりで、ここまで長い付き合いをしてこれたのだ。
「ん……エイリアン?……んー、私最近よく宇宙人の夢を見るの」
有香は少しうつむいて、今朝の夢を思い出す。
「夢?しかも宇宙人?」
「うん、なんかー、ちょっと身長の低い宇宙人が、私に言ったのよ。『早くこの星に来て、きっと来れる』って」
それ以外は覚えていない、と有香はつぶやき、再び空に目をやった。
相変わらず、空は星たちがくるくる踊っている。
「ねえ、ねえ!それって多分、宇宙人からの招待状だよ!?」
有香の話を聞き、もうリティーの腕は有香に当たるか当たらないかというくらい、もしくは腕がポンと外れてしまわないか心配になるくらい、ブンブン高速で降っていた。
そして彼女は、この世界の上に被さっている空ではなく、有香の方をジッと見つめていた。それから、思い切ったように言った。
「私、その星に行きたい!いや、行く!さあ出発しよう、有香!」
そう言うや否や、リティーは公園を飛び出してしまった。
「ちょっ、リティー!待って!本当に星に行くならどうやってどこから行くの?ちょっとー!」
もちろん、リティーは聞かない。
…しかし、本当にどこに行くのだろうか?
「待って!本当に待って!危ないから!」
「へ?何で?」
二つ目の電柱に差し掛かったところで、ようやくリティーは足を止めた。
そして、リティーもその異変にあんぐり口を開けることになる。
ドオオオオオオオォォォォォン!!!
「わ……う、うわああああ!ゆ、揺れてる!地面!」
「地震!?リティー、こっちに来て!」
地の底から唸るようなその地響きに、有香の声もむなしくかき消されてしまう。
いよいよ、二人は立っていられなくなり、路上に転がった。
そのうち、プツン、と彼らの目の前が真っ暗になり、意識を失った─。
何分たっただろうか。
意外と二人は早く目が覚めた。
しかし、まだ安堵してはいられないようだった。
目の前に広がっている光景に、またまたあんぐり口を開けることになる。
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