布団の上で

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 半分ぐらい開いたカーテンから見える空は明らかに昼頃の青さだ。目を細めたままぼんやり室内を眺める。洗面所の方で水を使う音が止まった。僕は眩しくて光とは反対の方に寝返りを打つ。 段々意識が覚醒してきた僕が布団の上であおむけになってスマホをいじっていると、彼女が無言で部屋に戻って来た。布団のそばに倒れ込むと、肘でぐりぐり押して来る。ちょっと痛い。 「なに?」 スマホから目を動かさずに聞いたら、 「ふん」 返されたのは鼻息だけだった。しょうがないので隅による。彼女も布団に潜り込んで一人分の布団はぎゅうぎゅうになる。僕の左ひじはカーペットの上にはみ出した。 彼女も布団に入ると俯せになってスマホをいじりだした。しばらくは何の会話もない。二人分の体温がこもった布団は温かすぎる。 「今日どっか行く?」なんとなく言葉が出る。 「どっか行きたいの?」 「特に」 「ふーん」 「どっかある?」 「特には」 「はーい」 またしばらく二人は黙った。でも僕はスマホを見るのも飽きたし、それになんだか彼女を触りたい気分になった。肌が触れ合っているのに、それ以上に近づきたくなる。 彼女の体に左腕を乗せる。額を彼女のあばらあたりに当ててみる。彼女の薄いスエットは僕の家の洗剤の匂いがした。 彼女は特に反応せずにスマホを観てる。僕も何も思わずぼーっとする。 この体勢はすぐに体の違和感を感じたので変えることにした。スエットの上から二の腕を触ってみる。特に何も言われない。今度は胸を触ってみた。ブラジャーがないので柔らかい肉の感触が掌全体に伝わる。ぶるぶる揺らして遊んでみた。 「ねえ、それ楽しいの?」 今回は彼女から反応があった。 「楽しい」 「あっそ」 多分五六回目くらいの同じやり取りをした。それでもマンネリみたいなものはない。少し物足りなくてまた彼女の体に片腕を回して抱きしめる。さっきより少し強く抱きしめた。 「ねえ」 僕がそういうと 「ちょっとまって」 彼女はほんの少しの間だけ、スマホを整理するようなスワイプをしてスマホを置いてくれた。 彼女はこっちを向いて僕を抱きしめてくれた。彼女の方が位置が少し高くて、彼女の胸に僕の頭が抱きしめられる風になった。 しばらく抱きしめられた後、二度キスをした。キスが終わった後、緩いスウェットから首元が覗いていたのでそこにもキスをした。 彼女が柔らかく笑いながら息を吐いた。表情は見えなくても多分分かる。 「ごはん食べよ」 彼女が言う。 「今何時だっけ」 「十一時過ぎたよ」 「わかった」 そう言ったのに僕は腕をほどかない。窓を開けても開けなくても変わらないくらいの気温。洗濯ものも回さなきゃいけないな。
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