第1学期

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   ***  あの制服は北高だろうか。川の向こう岸から、女の子が二人、こっちに向かって手を振っている。  郁は、そうちゃんと並んで土手の草の上に腰を下ろしていた。水辺に生えた草の葉が、微かな風に揺れている。どこかへ帰っていくところなのか、からすが、かぁ、と鳴いた。  夕暮れ時のせいか、少し肌寒く感じた。そうちゃんが途中の自販機で買ってくれた、缶入りのミルクティーを包み込むように持って手を温める。  対岸の女の子たちは、まだ手を振っている。そうちゃんが、軽く手を振り返した。一体何が嬉しいのか、女の子たちがぴょんぴょんはねている。 「ねえ、そうちゃん」 「ん?」 「そうちゃんって、こっちにいた頃、彼女いた?」  そうちゃんは、缶コーヒーを吹きそうになった。 「えっと、なに、恋の話ってやつ?」 「ううん、そういうんじゃなくて」 「郁も、もう高校生だもんな。そうかあ」  聞いてない。何だか一人で納得しているそうちゃんに向かって、郁は言った。 「わたしの話じゃないよ。そうちゃん、結婚するんだって?」  ちょうど吹いてきた風が、周囲の茅の葉を揺すった。  葉擦れの音に紛れたかと思ったけれど、ちゃんと聞こえたらしい。コーヒーを口に運んでいたそうちゃんの動きがぴたりと止まり、今度こそげほげほと咳き込んだ。 「大丈夫?」  郁は、そうちゃんの顔をのぞきこんだ。 「悪い、むせた」  そうちゃんは、何度か咳払いをして、息を整えた。それから、首をかしげるようにして少し考え、言葉を継いだ。 「うん、まあ、そのつもり。情報、早いなあ」  ちょっと恥ずかしそうだ。
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