第3学期

21/83
1926人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
 宴会は三時ごろにはお開きになった。みんなを見送る時に姿がなかったと思ったら、そうちゃんはリビングのソファで沈没していた。飲まされすぎたようだ。 「向こうで休みますか?」  奈緒ちゃんがカーペットに膝をついて優しく問いかけると、そうちゃんは「んん」とよく分からない返事をした。 「だいじょうぶ。――こっちきて」  こんな甘えるみたいな口調は、初めて聞いた。奈緒ちゃんが周囲を気にしてあわてている。 「聡、念のため言うけど、ここ、実家だからね。郁もいるからね」  お母さんが言い、奥の部屋から持ってきた毛布をばさっとかけた。 「ありがとー」  毛布の下から、へろへろの声が言う。奈緒ちゃんが毛布をきちんとかけ直してくれた。 「ほんと、お酒、弱いのよねえ。奈緒ちゃん、ごめんね」  お母さんが呆れたようにため息をついた。  夕飯まではまだ時間がある。肝心のそうちゃんが寝てしまったら、奈緒ちゃんも手持ちぶさたかもしれない。郁は、思い切って奈緒ちゃんに声をかけた。 「わたし、コンビニに行こうかな。奈緒ちゃんも一緒に行かない?」 「いいんじゃない?」とお母さんが同意した。「天気もいいし、近くを散歩してきたら? 聡は転がしとけばいいから」  沈没中のそうちゃんが「行っておいで」というみたいに、目を閉じたままひらひらと手を振った。
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!