1950人が本棚に入れています
本棚に追加
宴会は三時ごろにはお開きになった。みんなを見送る時に姿がなかったと思ったら、そうちゃんはリビングのソファで沈没していた。飲まされすぎたようだ。
「向こうで休みますか?」
奈緒ちゃんがカーペットに膝をついて優しく問いかけると、そうちゃんは「んん」とよく分からない返事をした。
「だいじょうぶ。――こっちきて」
こんな甘えるみたいな口調は、初めて聞いた。奈緒ちゃんが周囲を気にしてあわてている。
「聡、念のため言うけど、ここ、実家だからね。郁もいるからね」
お母さんが言い、奥の部屋から持ってきた毛布をばさっとかけた。
「ありがとー」
毛布の下から、へろへろの声が言う。奈緒ちゃんが毛布をきちんとかけ直してくれた。
「ほんと、お酒、弱いのよねえ。奈緒ちゃん、ごめんね」
お母さんが呆れたようにため息をついた。
夕飯まではまだ時間がある。肝心のそうちゃんが寝てしまったら、奈緒ちゃんも手持ちぶさたかもしれない。郁は、思い切って奈緒ちゃんに声をかけた。
「わたし、コンビニに行こうかな。奈緒ちゃんも一緒に行かない?」
「いいんじゃない?」とお母さんが同意した。「天気もいいし、近くを散歩してきたら? 聡は転がしとけばいいから」
沈没中のそうちゃんが「行っておいで」というみたいに、目を閉じたままひらひらと手を振った。
最初のコメントを投稿しよう!