第3学期

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   ***  コンビニはバス通り沿いにある。奈緒ちゃんと一緒に、いつもの通学路をぽくぽくと歩いていく。  酒屋さんの角を曲がり、川沿いの道に出たところで視界が大きく開けて、奈緒ちゃんが「わあ」と声を上げた。  冷たい風が川の向こうからぴゅうっと渡ってきて、二人して肩をすぼめる。奈緒ちゃんの髪がふんわり揺れた。 「寒いね」  奈緒ちゃんが、こっちを見て笑う。 「そうだね」 「郁ちゃん、鼻の頭が赤くなってる」 「奈緒ちゃんこそ」  二人で「えへへ」と笑った。奈緒ちゃんがまとっている空気は、柔らかくて優しい。何だか穏やかな気持ちになれる。 「ねえ、奈緒ちゃん」 「なあに?」 「そうちゃんが結婚するのが、奈緒ちゃんでよかったな」  奈緒ちゃんは、びっくりしたみたいに目を見開いてから、「ありがとう」と目を伏せた。 「わたしも、聡さんの姪御さんが郁ちゃんでよかった」  二人して照れてしまい、つま先を見ながら歩いた。郁は、ふと思いついて言った。 「奈緒ちゃん、最初から、そうちゃんの仕事のこと知ってた?」  一瞬、間があった。 「知らなかった」 「そうなの?」 「そうなの。言わないんだもん、何も。わたしが気がつくまで黙ってたんだよ」  どこかで聞いたような話だ。そして、年上の人に言うのはなんだけれど、ちょっとむくれている様子がかわいい。奈緒ちゃんは続けた。 「でも本当はね、聡さんが何者でも関係なかったと思う」 「――そうちゃんのこと好きなんだね」 「うん。一緒にいられて幸せだなあって、いつも思ってる」  奈緒ちゃんは、かみしめるように言って、ほほえんだ。
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