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しばらくの間、並んで座って水面に踊る光を見ていた。
お父さんは、そうちゃんに何を伝えたんだろう。知りたい気もするけれど、それよりも――。
お父さんは、ここにいる。郁の中に、そうちゃんの中に、会ったことがない奈緒ちゃんの中にさえ、確かに存在している。そんな当たり前のことに気がついた。
――もしかしたら、本当にいなくなってしまうことなんて、ないのかもしれない。
「郁ちゃん?」
柔らかな声で我に返った。奈緒ちゃんがこっちを見ていた。目が合うと、奈緒ちゃんはふわっとほほえんで「大丈夫だよ」と言った。
「大丈夫だよ、全部」
もう一度、ゆっくりと繰り返す。
何が大丈夫なのか、奈緒ちゃんは言わない。でも、そんな風に言われたら、何もかも大丈夫な気がしてきた。
――うん、大丈夫かもしれない。
「帰ろっか」
郁は明るく言い、立ち上がった。
風に背中を押されるようにして、コンクリートの階段をのぼる。「寒くなってきたね」「ほんとだね」と声をかけ合いながら、家に向かって歩き出した。
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