第1学期

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 この間そうちゃんと話をした河原を右手に見ながら、川沿いの道を歩いた。  その先のバス停から地下鉄駅までバスで十分。そこで地下鉄に乗り換えて三駅。  いつもより一本遅い列車になってしまったから、少し焦りながら改札を出ると、そこに、和泉がいた。  顔を見て、ちょっとだけほっとしたことは、本人には絶対に言わない。 「ぎりぎりじゃん。もう一本前のに乗れないの?」  言われて冷たく見返したら、相手がたじろいだ。 「和泉が勝手に居るんでしょ。別に待ってなくていいのに」  実際、頼んだわけでも、待ち合わせているわけでもない。なのに、時々、思い出したようにこうして改札にいる。  最初はたまたま同じ時間になるのかと思っていたけれど、どうやら違うらしいということに最近気づいた。そのことを友達の香奈ちゃんに話したら、「あんた、にぶいよ」と言われた。 「だいたい、和泉、朝練あるでしょ。どうしたの。今日はサボり?」 「試験休み」  そういえばそうだった。もうじき中間考査だ。部活をしていないと、感覚が分からなくなる。 「そんな冷たく言わなくていいじゃん。迷惑?」  悲しげな口調で聞かれて、つい、「そうでもないけど」と答えてしまう。  県内屈指の進学校に入ったはずなのに、なぜか、こいつがいた。  同じ中学校から進学したのは、郁と香奈ちゃんと和泉、それに河嶋君の四人だけだ。香奈ちゃんと河嶋君は、中学校でもずっと学年トップの優等生だったけれど、和泉がなんで入れたのか、よく分からない。  学校まで、並んで歩道を歩いた。早足で行かないと間に合わない。 「岡野、今日も練習あんの?」 「あるよ。だれかさんのせいで」  校内のコンクールだとはいえ、文武両道を謳っている学校だからか、やるとなったら本格的だ。そういうわけで、音楽の先生が、時々、伴奏者の練習を見てくれている。 「楽しそうでよかったじゃん」  和泉はあっさり言って、ちょっと笑った。
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