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お昼ごはんは、香奈ちゃんと一緒に食べることが多い。
香奈ちゃんは、小学校の頃からの友だちだ。ちょっとウェーブがかかった栗色の髪の毛がかわいくて、合唱部に所属している。
郁と香奈ちゃんの間では、最近、屋外でお昼ごはんを食べるのが流行りになっている。中庭の欅の木の下だとか、生徒会室の横の石のベンチだとか、そんな場所に並んで座ってお弁当を広げるのが、このところの日課だ。
ちなみに今日は、渡り廊下の端っこの階段部分に腰を下ろしている。目の前は中庭だ。
「郁ちゃん、ここ、いいね。風が気持ちいい」
「ほんとだ。すうーって抜けていくよね。ここ、いいかも。暑くなってきたし」
言いながら、郁は、水玉柄のランチクロスをほどいて、水色のお弁当箱を取り出した。お母さんは、ああみえて意外と──と言ったら怒られそうだけれど──マメで、ほとんど毎日お弁当を持たせてくれる。
でも、そこに問題がないわけじゃない。
郁は、元気にお弁当のフタを開けた。一瞬ののち、そこで目にしたものにフリーズし、だまってフタを閉じた。
「なに、なに? 今日はなんなの?」
「う、うーん」
香奈ちゃんが興味深々な様子で、郁の手をお弁当のフタから外し、「えいっ」と開けた。中をのぞき込んで一瞬黙ってから、笑い転げる。
「そんなに笑わなくても」
郁が抗議すると、香奈ちゃんが「だって、すごいよ」とさらに笑った。
郁は、自分のお弁当をちらっと見た。そこには、海苔を切り抜いてつくられた「押忍」の二文字が縦に並んでいた。
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