Midnight

16/16
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 私は一ヶ月間の出来事を、拓也に一生懸命話した。拓也はときどき相槌を打ちながら、そして笑顔を見せながら私の話を聞いている。  そして、あっという間に一時間が近づいてくる。それにつれて、だんだんと拓也の顔に翳りが見え始める。 「ねえ、拓也、どうかしたの?」  私は尋ねた。 「実はね、僕はどうしても穂乃果の願いを叶えたくて、今日は一時間一緒に居るって決心したんだ」 「ありがとう」 「でもね。これで、最後なんだ」 「うん。一回でも長い時間一緒にいられて嬉しかった」 「いや、そうじゃなくて、もう会えないんだ。僕はもうこっちには来れない」  私は思わず言葉を失う。何が起きているのかもよくわからない。そんな私に拓也はゆっくりとした口調で言う。 「僕は掟を破って、一時間もこっちにいたからね。だから、もう来れないんだ」 「そんなのイヤだよ」 「でも、もう無理なんだ。一度でも穂乃果の願いを叶えられてよかった」  拓也の体はもう消えかけている。 「イヤだよ。行かないで」 「もし、穂乃果がいつか死んだら、あの世で待ってるから、よろしくね」  拓也は最後に最高の笑顔を見せて消えていった。  それが、私の初恋だった。 【完】
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!