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「拓也、どうしても十五分だけしか会えないの? もっと、長い時間一緒にいることはできないの?」
言ってはいけないと思いながら、私は思わず言ってしまった。その言葉で、拓也の顔が曇るのが、私にもはっきりとわかる。だけど、私も一度想いを口にしてしまったせいで止まらない。
「ねえ、もうわかってると思うけど、私は拓也のことが好きなの。もっと一緒にいたいの。ふつうにデートして、ふつうにプレゼントを交換して、ふつうにキスもしたい。でもね、それが無理なのもわかってる。だから、せめてもっと一緒にいたいの」
私の言葉に、拓也は俯くと、
「それは無理だよ」
と呟いた。
「どうして無理なのよ。二時間も三時間もとは言わない。でも、せめて一時間くらいは一緒にいてほしいよ。十五分なんて、ちょっと話したら終わりじゃない。それとも、拓也は私のことが好きじゃないの?」
「そんなことはないよ。僕だって穂乃果のことが好きさ。だけど、時間のことは僕にはどうにもできないんだ」
「本当にそうなの? いつも、出てくる時は自分の意志で出てきてるんでしょう?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、帰る時はどうなのよ。いつも自然に消えてるみたいに見せてるけど、本当は自分の意志であの世に帰ってるんじゃないの?」
私の問いに、拓也は答えなかった。ただ、悲しそうな表情を浮かべて、静かに私を見つめる。
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