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「ねえ、拓也。今日は何の話する?」
「そうだなあ、学校であった話を聞かせてくれる?」
「ええっ、昨日もそうだったじゃない」
私が不貞腐れてみせると、拓哉がまた私の頭を撫でてくれる。だけど、やっぱり何の感覚もない。相手は幽霊なんだから、仕方がないといえば仕方がないけど、ちょっと切なくなる。
そんな私を宥めるように拓也が言う。
「ほら、僕はさ、結局高校には行けなかったからさ、みんなが高校でどんなことをしてるのか知りたいんだよ」
「うん、わかった」
渋々納得した私は、学校であったことを思い出す。
今日──というより、正確には昨日だが──私はいつもどおりに登校して、授業に望んだ。一時間目は数学。私が最も苦手とする科目だ。
今は高次方程式の単元をやっている。だけど、私にはチンプンカンプンだ。予習もしていないから、授業中に当てられても何も答えることなどできない。そんな日に限って、先生に当てられてしまうものだ。
私に指示された問題は『x³+7x²+11x+5=0を解け』という三次方程式の問題だったけれど、そんなものがいきなり解けるはずもない。結局、私は黒板の前で立ち尽くすことしかできず、先生に怒られてしまった。
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