Midnight

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 そもそも私が拓也と出会ったのは二ヶ月前のことだ。  それまでアパート暮らしだった私たち家族は、念願かなって一戸建てのこの家に引っ越してきた。中古物件だったけど、築年数は十五年ほどで、私たちが住むのには十分過ぎるくらいだ。  私にも初めて自分専用の部屋が与えられた。二階にある六畳の洋室。それだけの広さがあれば、私には十分だ。クローゼットもあるから、ベッドと机を置いてもまだまだ余裕がある。そんな部屋に、私は満足していた。  引っ越しをしたその日の夜、私は新しい部屋にドキドキしながらベッドに潜り込んだ。引っ越し作業の疲れで大きな欠伸(あくび)が何度も出るけど、興奮しているせいかなかなか眠れない。時間だけがどんどん過ぎてゆく。結局、私が寝付いたのはベッドに入って二時間ほど経った頃だった。  そんな私は、部屋の中に吹き込んだ冷たい風で目を覚ました。ちゃんと窓は閉めたはずだし、エアコンなんか入れてないのにおかしいなと思いながら体を起こす。時計を見ると、針は午前二時五十分を指している。まだ起きるには早すぎるからもう一眠りしようと体を横たえたそのとき、私はカーテンがゆらゆらと揺れているのに気づいた。
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