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どうやら、この家はもともと拓也が住んでいた家らしかった。そして、私に与えられたこの部屋が、まさに拓也の部屋だったらしい。もしかすると、拓也はいわゆる地縛霊というやつだろうかと思いながら、
「ねえ、あなたって地縛霊なわけ?」
と率直に尋ねてみた。
「どうだろう。地縛霊ってわけではないと思うけどね。だって、ふだん僕はちゃんとあの世にいるわけだし。だけど、どういうわけか午前三時から十五分だけ、僕はこの部屋に来ることができるみたいなんだ」
「どういう原理なのよ?」
「そんなこと僕に訊かれてもわからないよ」
「そういうもんなの?」
「そういうもんさ」
私と拓也は思わず顔を見合わせて笑った。
「ねえ、あなたは何歳?」
「僕は永遠の十五歳。死んじゃったから年をとらないからね。で、君は何歳?」
「私は十六歳で、もうすぐ十七歳。今、高校二年生よ」
「ということは、僕よりもお姉さんなわけだ」
「ま、一応そういうことになるかな」
私は頭を掻きながら言った。そんな私を見ながら、拓也は笑顔を浮かべる。
「ねえ、僕と話をしようよ。どんな話だって良いんだ。毎日ただここに出てくるだけってのもつまらないし、君みたいな可愛い女子に友達になってもらえたら嬉しいし」
「えっ!!」
私は“可愛い”というその一言で、顔が真っ赤になるのを感じた。
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