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Midnight
ピピピピピ……ピピピピピ……。
午前二時五十分、目覚まし時計が鳴り始める。私はゆっくりと体を起こして、目覚まし時計を止めた。そして、部屋の明かりは消したまま、乱れた髪をブラシで整える。
いつもの時間まであと十分。もうすぐ拓也がやってくると思うと、少しずつ私の心臓がドキドキと高鳴り始める。
私はじっと窓にかかったカーテンを眺める。窓は開いていないが、カーテンはゆっくりと揺れている。
午前二時五十九分、カーテンの向こう側が、ぼんやりと青白く光り始める。少しずつカーテンの揺れも激しくなってゆく。
時計の秒針が、カチッ、カチッと規則正しく音を立てながら時を刻む。
午前三時まで、あと十秒、九秒、八秒、七秒……。カーテンの揺れがどんどん激しくなってゆき、青白い光がどんどん人の形に変わってゆく。
……四秒、三秒、二秒、一秒。そして、午前三時。その瞬間、カーテンが捲れ上がり、光の中から拓哉が姿を現した。
「穂乃果、こんばんは」
拓哉はゆっくりと私の方に近づいてくる。その体は透けていて、仄かに光を纏っている。
「拓也、いらっしゃい。待ってたよ」
私が言うと、拓也はクククッと笑いを圧し殺しながら、
「嘘ばっかり。ついさっきまで寝てたくせに」
と笑顔を見せる。
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