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私は司書じゃない
言いたい言葉は全く音にならず。
私は、少しだけ動く首を小刻みに横に振って自分の意を伝えようとした。
だけど、強張る私の顔とその動きを、彼女は違う意味で捉えたらしい。私が拒否したと思った様だ。
ピクリと肩で反応した彼女は「何故?」と呟いた。低い低い声で。
「おしえて……おしえてください」
伸びてきた黒い指。
指先も掌も、泥で黒く。爪の数枚は剥がれてしまっているのか赤黒く見えた。
その指先が私に触れようと近づく。
「……っ……!!」
「――さがして。……おしえて」
一瞬だけ、隠れていた彼女の瞳が見えた。
虚ろなそれは、命の輝きを失った、ただの黒。
「いやあぁっ!」
震える身体に思い切り力を込める。
助けて
冷たい空気を声で跳ねのけようと、私は叫んだ。
「助けて……! 誰か……」
へたり込んだ私に、黒い女が覆いかぶさってこようとした。
寒い。
「成瀬さん……」
このまま闇に包まれて、ゆるやかに命が消えていくのだろうか――。
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