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「時の双子」という名の神がいる。 しばしば外見の不一致が認められる神にしては珍しく、どの絵画に描かれる姿も、細かなところでの違いはあれど、ほぼ同じであった。 しかし、その姿というのは妙なものであった。 幼い───それも四、五歳の少年が二人、彼らの身の丈ほどもある鎖のついた手錠で両の手を繋がれているのである。 何故そのような外見になったのかと言うことだが、これもまた、諸説などなく、ただ一つの答えが、真実だとして人々の間で広まっていた。 曰く、罪人なのだそうだ。 彼らはその名の通り時を司る神。片方は未来を、もう片方は過去を、二人揃えば現在を司るのだそうだ。 彼らの鎖は罪の証。時を遡るは罪。時を進めるは罪。 彼らは、神にして罪人。罪人にして神。 そして、彼らの手錠は力を制限するためのもの。 鍵は、未来を、過去を、心から望むものの心の臓。  
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